こすもす公園に咲く花
Welcome to Cosmos Park
山の方へ列車が走っていき、 動物達が銀河鉄道を見送る。 ここはこすもす公園。こすもすの花咲く、小さな公園。 旅人の僕が、ピノキオと星空を写真に写そうとしていると 小学生のあーちゃんがすべり台の上にあがってきた。 「星が見えるね」と言う僕に、 あーちゃんは、「当たり前じゃない、夜なんだから。」と言う。 あーちゃんはいつもそんな感じだ。 僕らの街では当たり前でない数の星が広がり、 僕はそこに宇宙を見た。
初めてそこに降り立ったのは、ある寒い日のことだった。 ぼんやりと目を覚ますと、夕暮れの月明かりのもと 不思議なピノキオのすべり台が目の前に現れた。 遊んでいる二人の女の子がいて、 気にしないフリをしながらも、 なんとなく横目で外から来た僕らのことを見ていた。 小学生のあーちゃんとみーみ。この公園の主だ。
あーちゃんとみーみのおばあちゃんである、 こすもすのお母さんは小さな農家レストランを営んでいる。 かつてその町には大きな津波が押し寄せた。 町の多くは波に飲まれ、大きな被害を受けた。 自分達の出来ることを探し、 こすもすのお母さんは、困っている人達へご飯を作り続けた。 人々はお互いに助け合いながら、なんとか日々を乗り越えた。
食べるものも落ち着いた頃、こすもすのお父さんは 子ども達の遊ぶ場所がなくなってしまったことを耳にする。 仮設住宅が公園やグラウンドなどに建てられることとなり、 子ども達が遊べる場所はどんどん減ってしまった。 お父さんは、レストランの目の前にあるこすもすの花畑を みんなのための公園にしたいと言い出した。
その町にボランティアに来ていたフィルさん。 フィルは地震で壊れた幼稚園の厨房を直していた。 フィルはある時、こすもすのお母さんのレストランに立ち寄った。
「ご飯、食べさせてもらえませんか?」
町は大変な状況となっていて、食事の出来るところがあまりなかった。
「いいですよー。」とお母さんはいつもの調子だ。 「好きなだけ食べてくれ! この町のために来てくれている人達から、お代は受取れない。」 と、男気をみせるお父さん。 すると、翌日も愛嬌ある調子で、フィルはご飯を食べにきた。 「お母さん、おなかすいたー。]
フィルは、自分の仕事が一段落した頃、 お父さんから「公園を作りたい」という話を聞く。 「そんな楽しいこと独り占めしないで、僕らにも手伝わせてよ。」 フィルとお父さんによるこすもすの公園作りが始まる。
フィルは仲間をたくさん連れてきた。 陽気な連中がたくさん集まった。 絵を描く人、力持ちの人、野菜を作る人。 いろんな人がいて、そこはサーカスの楽屋のようだった。 「かんぱーい。」
仲間にはギター弾きがいた。 みんなが力作業をしている時でも、 ギター弾きは横でずっとギターを弾いていた。 でも、それに文句を言う仲間はいなかった。 一番大事なのはみんなが心地よく過ごせることだった。 ギター弾きは音楽を奏で続けた。
フィル達はすべり台を作ることとした。 木を切り出すところから始め、 6ヶ月かけて作られた特別なすべり台が完成する。
みんなはそれをピノキオと呼んだ。
穴を掘り、丘を作り、トイレを作り、東屋も作った。 いつの間にかそこは公園になっていた。
彼らは種を蒔いて、この町を旅立った。
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